#「美しい国・日本」再考
+私たちの国は今、憲法改正に向けた国民投票のあり方をめぐっ
て公聴会を繰り返している。この時、靖国神社のA級戦犯合祀
について国家の関与を示す資料が見つかった。国家の意志によ
ってA級戦犯が合祀されたことが明らかとなった。国家の意志
によって、あの戦争で命を落とした亡霊たちは憲法改正の先に
どのような日本を見ているのだろうか。
戦記文学不朽の名作『戦艦大和ノ最期』の著者吉田満は、『戦
没学徒の遺産』の中でこんなことを記している。
「私はいまでも、ときおり奇妙な幻覚にとらわれることがあ
る。それは、戦没学徒の亡霊が、戦後三十数年をへた日本の
上を、いま繁栄の頂点にある日本の街を、さ迷い歩いている
光景である。死者がいまわのきわに残した執念は容易には消
えないものだし、特に気性のはげしい若者の宿願は、どこま
でもその望みをとげようとする。彼らが身を以て守ろうとし
た“いじらしい子供たち”は今どのように成人したのか。彼
らのいう日本の“清らかさ、高さ、尊さ、美しさ”は、戦後
の世界にどのような花を咲かせたのか。それを見とどけなけ
れば、彼らは死んでも死に切れないはずである。
彼らの亡霊は、いま何を見ているか。商店の店先で、学校
で、家庭で、国会で、新聞のトップ記事に、何を見出すだろ
か。・・・」
改憲論者からも護憲論者からも、「美しい国・日本」の姿が見
えてこないのはどうしたことか。
+それぞれの民族、文化圏は、それぞれある特定の美の体験の下
に立つ。イスラエルにとって特徴的なことは、神の自己放棄に
至るまでのヤハウェの下降にはその美表出を伴うという点にあ
る(フォン・ラート)。天を引き裂いて低き地に下った神イエ
ス・キリストこそ“最高の美”なのである。