#「もうたくさんだよ」
+食事の時間が終り静かになった食堂で、私たちはナズリ婆さん
の話を聞くことにした。真白な髪に、しっかりと相手を見据え
る目、そして顔に刻まれた深い皺。1900年に生まれた彼女
の人生は、まさに20世紀そのものである。
「あいつらに砂漠の奥の山まで、むりやり連れて行かれた。
洞穴に集められ、喉を切られて殺されたり、なぐられたりし
たんだよ。
わしの頭には、オノでなぐられた傷が今でもある。血が流
れて目が見えなくなるくらいだった・・・。
殺された者は、穴の中に置き去りにされ、運のあった者だ
けが生き残った。あとは、川に身を投げて死んだ。
食べる物は何もなくて、人や犬の肉も食べた。死人が出る
と、皆で探しに行って・・・」
のどの奥から絞り出すような声で老婆は話した。15歳のとき
彼女は肉親のすべてを失い祖国を逃れたのだった。
「今でも、自分の村に帰りたいと思う?」
「ああ。でももう、わしらの村じゃないんだ。
もう、どこにも行かんよ。どこにも。
あのときは、あまり死んだもんで、死体が血で流れてね・
・・もうたくさんだよ。
少し前までは、夜中に起きてよく泣いたもんだ。あのとき
の事が、全部目の前に見えてくるんだよ。」
(『21世紀は警告する』 「民族の絆」より)
+戦争を知らない総理が、憲法改正と教育基本法改正に手をつけ
ている。訪米の足で中東を歴訪した総理の、自衛隊員を前にし
たときの顔は心なしか得意げに映った。「もうじき、君たちが
手にしている武器の引き金を自由に引ける時が来る」、と言っ
ているように見えたのは私の錯覚か。
+民族の壁、敵意の中垣を壊すためにキリストは十字架で死んだ
(エフェソ2:14)。十字架のキリストを描きだしたい。
「もうたくさんだよ。」人がこれ以上死ぬのは・・