#技術革新

     レメクは二人の妻をめとった。
     …ツィラもまた、トバル・カインを産んだ。
     彼は青銅や鉄でさまざまな道具を作る者となった。
                (創世記4:19、22)

+「地上をさまよい、さすらう者」となり、町を建てて住みつい
 た人類最初の殺人者カイン。ここに大地から引き抜かれ、根な
 し草となった放浪者たちが肩を寄せ合って生きる都市生活が始
 まったと聖書は語る。こうして始まったカインの系図は、7代
 目レメクの時に大きな転換点を迎える。富の蓄積が二人の妻を
 養うことを可能にし、そこから牧畜、音楽を生業とする者が生
 まれ、さらには鍛冶職が人間の歴史に登場したのである。
+ここには穏やかな文明への立ち上がりがある。しかし、この文
 明の進歩とは裏腹に、神と人間との疎外化はますます深刻にな
 っていった。特に、最後の人たち、トバル・カインの登場は、
 決定的に新しい何かを人類の歴史にもたらしたのです。それは
 剣、すなわち武器です。武器を手にして以来、復讐と報復への
 渇きが途方もなく増大したのです。
+文明の進歩と精神の進歩とは、必ずしも歩調をあわせていない
 のです。それは過去2世紀間の科学技術のめざましい発展が、
 私たちの精神に何らそれに見合う発展をもたらさなかったこと
 からも判ります。より真実なのは、「あらゆる技術革新は集団
 の死の危険をはらんでいた」(アンドレ・ヴァラニャック)の
 です。
+宗教学者M.エリアーデは、「鉄が日常生活の中で用いられる
 ようになったのは、地殻鉄鋼の冶金術によってであった。この
 事実は重大な宗教的帰結をもたらした」と教えています。どう
 いうことかと言えば、人間は今や、鉱山や鉱物が分有する大地
 の聖性と直面したのです。エリアーデは言います。「世界中ど
 こでも、抗夫は純潔状態、断食、瞑想、祈り、祭祀行為を含む
 儀式を行う」と。なぜなら、「抗夫たちは、不可侵とされてい
 る聖なる領域にはいるからである。より深淵で、危険な聖性に
 触れる」からであると。
+この未熟なままで掘り出された〈闇の聖性〉をはらんだ鉱石が
 窯に運ばれ、それから、もっとも困難で危険な作業が始まるの
 です。職人は母なる大地に代わって鉱石の〈成長〉を促し、完
 成させるのです。この鉱石の成長を促す決定的な要因が「火」
 です。火は「いっそう早く作る」手段であるばかりではなく、
 「自然」にすでに存在していたものとは別のものを作る手段で
 もあったのです。
+こうして人間は、自然を作り変えることに対する責任を引き受
 けることで、時間にとって代わったのです。地底の深みで「成
 熟する」には地質学的な年月を要するものを、職人は数週間で
 得たのです。ここに、近代の科学技術の特徴である時間に取っ
 て代わろうとする人間の努力が始まったのです。
+問題は、時間に取って代わろうとした人間の営みが、恐るべき
 結果を招いたと語られていることです。人間は剣を手にして以
 来、復讐と報復への渇きが途方もなく増大した世界を生きる者
 となったのです。

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