#力の移行
さあ、天まで届く塔のある町を建て、
有名になろう。
(創世記11:4)
+アルビン・トフラーの著書に『パワーシフト』があります。ト
フラーは、人類の歴史を三つの力の移行という視点で捉え直し
たのです。三つの力とは、「筋力と富と知識」です。そして今
近代に始まる産業社会を支えてきた富の力は、知識に移りつつ
あるというのです。
+トフラーはこの著を著す10年前、1980年に『第三の波』
という本を書いています。人類の歴史を押し寄せる波になぞら
え、三つの波で区分したのです。第一の波は、一万年前に始ま
る農業段階、第二の波は、四百年前に起こった産業段階、そし
て第三の波は、今起こりつつある段階であると。
+そしてトフラーは、今起こりつつある第三の波の変化をこう語
るのです。「新しい文明が我々の生活の中に生まれつつある。
それは一万年前の農業の発明と共に起こった第一の波と同じほ
ど重大な、産業革命と共に始まった地を揺るがすような第二の
波と同じほど深い意味を持つ、事件である」と。しかも、その
「進歩の潮流はあまりにも速く、変革の波はあまりにも高い。
力でもスケールでもスピードでも、今度の変化は歴史上比べる
ものがない」と。
+この第三の波の時代こそ、知識が力を持つ世界なのです。「知
識はそれ自身が最良質の力の源となったばかりでなく、武力と
富双方にとっての最重要な構成分子となった。言葉を変えれば
知識は金力と筋力の従属物の地位から脱して、その二つの力の
本質となった」のであると。つまり、知識を持つ者が、富と武
力を支配する時代が来たのです。
+興味深いことに、実は、聖書も大方においてトフラーと同じ見
方をしているのです。「原初史」といわれる創世記1章から1
1章の記事がそれです。ここにあるのはまさに「力の移行」、
パワーシフトなのです。
+まず第一のアダムのパワーは「土を耕す」力、筋力です。この
アダムの後にくるのがレメクの時代です。「レメクは二人の妻
を娶った。」(4:19)。ここにあるのは富の蓄積です。富
の蓄積が二人の妻を娶ることを可能にしたのです。さらに言え
ば、彼から生まれた子供の中にユバルという名の、「竪琴や笛
を奏でる」人がいました。ユバルのように芸術を生業とする者
の存在は、富の蓄積があって初めて可能となるのです。
+そして第三が、バベルの塔の時代です。ここでは天に届く塔の
建設が語られています。その力は知識です。どれほど筋力があ
り、またどれほど金力があっても、知識の結集なくして、天に
届く塔の建設など不可能なのです。
+問題は、この知識が力を得たバベルの塔の時代は、「大空の下
に横たわっているのではなく、痛みの下に横たわって」いる世
界であるということです。同じことが現代についても言えるの
ではないでしょうか。私たちが今、現に生きているこの時代は
痛みのもとに横たわる世界ではないのか。
+世界は今、低きに下る知恵、十字架のキリストを必要としてい
るのです。
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